X((旧Twitter)と書いたらオウム真理教や統一教会っぽいですね)を見ていたら、NHKの番組「100分de名著」の公式Xアカウントが閉鎖するというポストがトレンドになっていたようでした。惜しむ声がそれなりにあったからトレンドになったのだと思いますが、アカウントを見てみたらほとんどが番組の宣伝・告知ばかりでなくなったところでだからどうしたとしか思えませんでした。Xに依存しすぎではないでしょうか。
(追記:そもそも「現場では必死で運用してきたのですが求められる成果水準に達することができず私どもの力不足を痛感しております。」などという恨みつらみのようなことを公式アカウントで書く必要があるでしょうか?経営陣から不当な圧力をかけられているかもしれないという下手な勘繰りを生むだけだと思います。番組制作者が頑迷な人たちだという印象を受けました。)
「100分de名著」公式アカウントは3月末をもって閉鎖することが決まりました。現場では必死で運用してきたのですが求められる成果水準に達することができず私どもの力不足を痛感しております。今後は公式HPの「よくある質問」コーナーで同様の発信を続けていきます。長らく愛顧いただき深く感謝します。
— 100分de名著 (@nhk_meicho) March 26, 2026
この番組、鹿児島でお世話になった年長の知人に勧められて見たことがありますが、ほとんどのテレビ番組を見ても面白いと思えない人間なもので、進行役のタレントがうるさく感じて一回で見るのをやめてしまいました。納富信留氏が解説役で出演していたプラトンの著作を扱った回だということは覚えていて、番組が始まってまだ間もない頃だと思っていたのですが、Wikipediaのページによるとその回は2013年の7月で、番組が始まったのは2011年で結構経った後だったということを知りました。
実際に見たのはその一回のみですが、その後どんな本が扱われているのか気になって見たところ、プラトン学会の会長まで務めた納富氏ならともかくも、他に適当な人はいくらでもいるはずなのになんでこの人をという解説役の人選に疑問を感じました。特に、政治的に左派的なことを述べている人の起用が目につきました。Wikipediaで放送回一覧を見直したら必ずしもそうとも言えないかもしれませんが、たとえばヘーゲルの『精神現象学』になぜマルキストの斎藤幸平氏が起用されるのでしょうか。まあマルクスはヘーゲルの影響を多分に受けた人物ですし斎藤氏は著作の内容はともかくも学者ですからまだ良いとしても、ル・ボンの「群衆心理」になぜ学術的な訓練を受けていない著作家(?)の武田砂鉄氏が起用されるのでしょうか。「アベノミクス」を「アホノミクス」と罵倒し、無責任な経済予想を垂れ流していた浜矩子氏がアダム・スミスの『国富論』の解説にふさわしいのでしょうか。他にも政治的にはよくわからない人ですが、モンゴメリの『赤毛のアン』になぜか文学畑とは程遠い茂木健一郎氏というのもありました。
政治的な偏りに関しては、あまり安易に頼りたくないのですがこれもWikipediaによると、そもそもこの番組自体、共産主義者の聖書である『資本論』を扱った番組がもとになっているそうで妙に納得させられました(講師は今では希少なバリバリの「マル経」の先生でした)。こういう情報を見ると、番組制作者が今ではすっかり空想の最たるものとなってしまった政治思想に憧憬を持っている人で、こういう番組に出演するのはどうしても自己顕示欲の強い「出たがり」の人になりがちとはいえ、そういう人を用いて結局名著とされる書物を利用してなんらかの自己主張をさせて、お手軽な「教養」に憧れる視聴者を取り込みたいだけでないのかと訝しく思っています。
「教養俗物」などという言葉を残した人物の思想もすっかりこの手の番組を好んで見るような人が飛びつきそうな典型になっていると思われるのもなんとも皮肉ですが(実際に番組でも扱われています)、それはともかくもなんにせよ所詮こんな番組を見たところでわかった気になる以上のものではなく、直接原典に当たるのが一番なのでしょうが、その手の本はいきなり読んでも意味不明なものも少なくないでしょうから、適当な入門書や解説書(まあこれも玉石混交ですから選ぶのは難しいですが)を図書館や本屋さんで探したり、放送大学のラジオでも聞いたほうがよほどマシというものです。そもそも中には実は「名著」の皮を被った本当にナンセンスな本もあるでしょうし、人生は有限ですから別にいたずらに多くの本に親しむことが良いこととは限らず、とりわけ思考力を養うという点では必ずしも役に立つわけではありません(まあ同じようなことはこの番組で扱われそうな昔の人物も述べていましたが)。
番組は気づけばもう15年以上続いていますが、もし質の低い解説者を起用すればとりわけ古典に対する一面的な見方を広めてしまい、社会に害悪をばら撒くようなものですからXのアカウントだけでなく番組自体潰してしまっても一向に構わないと思っていますし、そこまではせずとも内容を吟味したうえで毎週毎週ではなく年に数回にしても良いのではないかと思うのですが、きっと視聴率自体は高いからこれほど長続きしているのでしょうし、なくなったところでせいぜいもっとくだらない番組ができるだけでしょう。
あくまで私が見たのは一回きりで、そこでは別段解説者がおかしな話をしていた覚えはなく、実際のところはどうなのかはテレビを処分しもはやNHKと契約していない私には確かめようがないのですが、杞憂なら良いとは思っています。
以下追記。本文で左派的な偏向があるのではないかと書きましたが、確か番組の目的が「戦争をなくすこと」と過去に述べているのを目にした記憶があったものの定かではなく本文では触れませんでした。しかしXを見ていたら公式アカウントが確かにそのように述べていたのが見つかりました。
今夜22時25分「ショック・ドクトリン」スタート。#100分de名著 のミッションの一つが「戦争をなくすこと」とかつて呟きましたが今回もそれに関する題材。戦争等で人がショック状態にある時に推進される過激な経済改革の正体をナオミ・クラインが暴き出す! 堤未果さん解説ですhttps://t.co/NAP0SIJVlE
— 100分de名著 (@nhk_meicho) June 5, 2023
言うまでもないことですが、テレビ番組で様々な有名な書物、とりわけ古典を紹介したり解説したりすることと「戦争をなくす」こととは何の関係もないことです。そうである以上は、やはりこの番組がそのような書物を利用、時には歪曲して特定の政治的主張を宣伝しているのではないかという疑惑が深まりました。また、マルクスはともかくも、プラトンとナオミ・クラインを同じ番組で取り上げることにも政治的な偏向があるとしか思えません。こんなことを平然と書く番組制作者の知性や良心も疑われます。
以下、続きです。

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